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2019年 12月 17日
2019/12/17

日記:


   先日、手に入れた、クララ ハスキルのBOXモノを聴いています。

  手始めにコンチェルト集の方、殆んどモノラル録音ですから、モノラルの再生装置で
  聴いていますが、やはりモノはステレオ再生装置では演奏が聴き難いですね。
  ただ、とは言え1950年代の前半録音の質は戦前よりも悪く鮮明度はだいぶ落ちて
  います。雑音も其れなりにあります。ライブの放送録音も入っていますが、それも
  かなり不鮮明でした。幸いピアノのタッチは崩れているモノは少なく幸いです。
  技士がLP程度の録音に慣れていないのかも知れません。50年代後半はかなり
  良質な録音になっています。1960頃のステレオ録音のモノは少しステレオ感を
  強調してあるようです。この録音をリマスターしたSACDのモノより派手な
  感じで、ハスキルには似合わないようです。特にタッチの残響の強調はかなり疑問を
  感じました。それでも視聴には耐えますが。

  聴いているなかで特に好感を持った演奏は
  
   モーツァルト:ピアノ協奏曲9番 K271 パァブロ カザルス 指揮 
                       カザルス祝典管弦楽団  1953年6月19日
                       ライブ録音 
          ”            カール シューリヒト 指揮
                       南ドイツ放送交響楽団 1952年5月23日
                       ライブ

   モーツァルト:ピアノ協奏曲23番     ヌッシオ 指揮
                       スイス・イタリアーナ管弦楽団 1953年6月25日
                        ライブ録音

   ショパン:ピアノ協奏曲第二番      イゴール マルケビッチ 指揮
                       ラムルー管弦楽団    1960年10月   
                       ステレオ録音 ST

   シューマン:ピアノ協奏曲        オーテルロー 指揮
                       ハーグ・フィル     1951年5月   


        
   9番はとくにカザルスとの演奏は素晴らしいです。カザルスの指揮は早めのテンポで
  曲の構成のコントラストが明快、エネルギッシュで作曲者の意図を良く再現している様に
  思われます。若々しく、明晰、晴れやかで美しい名曲です。二楽章はカザルスの晩年の
  重々しさが少し出ていますが、ハスキルがとても軽やかにカバーしてしまっていて感動的です。
  二楽章のみをとれば、シューリヒトの指揮の方もかなり其れなりに納得され、美しいです。
  この二つの録音が近いので、かなり類似した考え方でハスキルは演奏しています。
  シューリヒトの方が少しだけ、オケとの盛り上がり方にむらっけがあります。カザルスの方は
  構成美をより感じさせるかも知れません。また、オケも良くカザルスに付いて行っています。
  モーツァルトはコッチをより気に入ると私は思いました。

   ショパンの二番、一楽章の指揮、マルケビッチと少し考え方が違っていてオケが元気過ぎかも
  知れません。作曲が突き詰めていないので、マルケビッチが締まりを付けたと云う所でしょう。
  ハスキルはしっかり歌いきり、ゆっくり慌てていないので、結果チグハグな印象が少し出て
  聴こえました。二楽章、三楽章はそんな事は無く、とてもショパン的に歌っていますが、所謂
  ショパン弾きとは違い、歌がしっかりしていて美しいです。とくに二楽章は素晴らしい。
  ショパン自身が弾いたら、この演奏に近いのではと思わせる演奏です。

   シューマンはオーテルローとの組み合わせがとてもマッチしていて、シューマンのこの曲と
  してはあまり聴けない素晴らしい完成度を聴くことが出来ました。古いわりに録音も良いです。
  この曲は一楽章がメインで二楽章・三楽章は付けたし的な所を感じさせますが、そんな事も無く
  全曲の統一感を感じさせる立派な演奏です。とても締まった正統的な響きでオケも良いです。
  二楽章の質もハスキルだから出来る深さを感じる事ができました。リパッテイーのこの曲より
  遙かに上質に思いました。

   ハスキルの演奏はステレオ初期録音時の演奏とモノラル録音時の頃を比べると遙かに
  モノラルの方が集中力が高く、曲の構成美も強固に現わされています。フレーズの最後まで
  キッチり明解に歌われており、左手の歌わせ方も徹底されていて完成度がとても高い歌を
  味合うことが出来るのはとても嬉しいです。各フレーズの最後までしっかり歌っているので
  指揮者がフライング気味に次の小節に入ってしまう事も多々ありました。その歌い方は
  澄んだ正しさを持つ気品が現われる、最近無くなりかけているモノです。

   このシリーズのモノラルの録音はレンジが狭く今のステレオとはかなり鈍い音ですが
  ピアノのタッチが解らない事はありません。もし、ピアノの音に変な音色や残響があったら
  それは再生装置に問題があると思います。特に抵抗器の音色は留意すべきと思います。
  モノラルはモノ専用の装置で聴くべきで、ステレオ装置で聴くと変なバランスの音としか
  鳴りません。


   ソナタなどの器楽曲はこれから楽しみます。ベートーベンのテンペストや狩りは
  数回の録音が入っているので期待できます。少し厳しい鑑賞でしょうか。


    今夜の一曲。


      Piano Concerto No. 9 in E-Flat Major, K. 271, "Jeunehomme": I. Allegro
                    クララ・ハスキル  指揮 パブロ・カザルス


            





by Artist-mi | 2019-12-17 15:48 | Comments(0)


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