2017年 12月 22日
2017/12/22

 クリスマスの贈物 竹久夢二
         1925.9.25              

「ねえ、かあさん」
 みっちゃんは、お三時やつのとき、二つ目の木の葉パンを半分頬ほおばりながら、母様にいいました。
「ねえ、かあさん」
「なあに、みっちゃん」
「あのね、かあさん。もうじきに、クリスマスでしょ」
「ええ、もうじきね」
「どれだけ?」
「みっちゃんの年ほど、おねんねしたら」
「みっちゃんの年ほど?」
「そうですよ」
「じゃあ、かあさん、一つ二つ三つ……」とみっちゃんは、自分の年の数ほど、テーブルの上に手をあげて、
 指を折りながら、勘定をはじめました。
「ひとつ、ふたあつ、みっつ、そいから、ね、かあさん。いつつ、ね、むっつ。ほら、むっつねたらなの? ね、かあさん」
「そうですよ。むっつねたら、クリスマスなのよ」
「ねえ、かあさん」
「まあ、みっちゃん、お茶がこぼれますよ」
「ねえ、かあさん」
「あいよ」
「クリスマスにはねえ。ええと、あたいなにがほしいだろう」
「まあ、みっちゃんは、クリスマスの贈物のことを考えていたの」
「ねえ、かあさん、何でしょう」
「みっちゃんのことだもの。みっちゃんが、ほしいとおもうものなら、何でも下さるでしょうよ。サンタクロスのお爺じいさんは」
「そう? かあさん」
「ほら、お口からお茶がこぼれますよ。さ、ハンカチでおふきなさい。えエえエ、なんでも下さるよ。みっちゃん、何がほしいの」
「あたいね。金の服をきたフランスの女王様とね、そいから赤い頬ほっぺをした白いジョーカーと、
 そいから、お伽とぎばなしの御本と、そいから、なんだっけそいから、ピアノ、そいから、キュピー、そいから……」
「まあ、ずいぶんたくさんなのね」
「ええ、かあさん、もっとたくさんでもいい?」
「えエ、えエ、よござんすとも。だけどかあさんはそんなにたくさんとてもおぼえきれませんよ」
「でも、かあさん、サンタクロスのお爺さんが持ってきて下さるのでしょう」
「そりゃあ、そうだけれどもさ、サンタクロスのお爺さんも、そんなにたくさんじゃ、お忘れなさるわ」
「じゃ、かあさん、書いて頂戴ちょうだいな。そして、サンタクロスのお爺さんに手紙だして、ね」
「はい、はい、さあ書きますよ、みっちゃん、いってちょうだい」
「ピアノよ、キュピーよ、クレヨンね、スケッチ帖ちょうね、きりぬきに、手袋に、リボンに……ねえかあさん、
 お家うちなんかくださらないの」
「そうね、お家うちなんかおもいからねえ。サンタクロスのお爺じいさんは、お年寄りだから、とても持てないでしょうよ」
「では、ピアノも駄目かしら」
「そうね。そんなおもいものは駄目でしょ」
「じゃピアノもお家もよすわ、ああ、ハーモニカ! ハーモニカならかるいわね。そいからサーベルにピストルに……」
「ピストルなんかいるの、みっちゃん」
「だって、おとなりの二郎じろうさんが、悪漢わるものになるとき、いるんだっていったんですもの」
「まあ悪漢ですって。あのね、みっちゃん、悪漢なんかになるのはよくないのよ。それにね、もし二郎さんが悪漢になるのに、
 どうしてもピストルがいるのだったら、きっとサンタクロスのお爺さんが二郎さんにももってきて下さるわ」
「二郎さんとこへも、サンタクロスのお爺さんくるの」
「二郎さんのお家へも来ますよ」
「でも二郎さんとこに、煙突がないのよ」
「煙突がないとこは、天窓からはいれるでしょう」
「そうお、じゃ、ピストルはよすわ」
「さ、もう、お茶もいいでしょ。お庭へいってお遊びなさい」
 みっちゃんはすぐにお庭へいって、二郎さんを呼びました。
「二郎さん、サンタクロスのお爺さんにお手紙かいて?」
「ぼく知らないや」
「あら、お手紙出さないの。あたしかあさんがね、お手紙だしたわよ。
 ハーモニカだの、お人形だの、リボンだの、ナイフだの、人形だの、持ってきて下さいって出したわ」
「お爺さんが、持ってきてくれるの?」
「あら、二郎さん知らないの」
「どこのお爺さん?」
「サンタクロスのお爺さんだわ」
「サンタクロスのお爺さんて、どこのお爺さん?」
「天からくるんだわ。クリスマスの晩にくるのよ」
「ぼくんとこは来ないや」
「あら、どうして? じゃきっと煙突がないからだわ。でも、かあさんいったわ、煙突のないとこは天窓からくるって」
「ほう、じゃくるかなあ、何もってくる?」
「なんでもよ」
「ピストルでも?」
「ピストルでもサーベルでも」
「じゃ、ぼく手紙をかこうや」
 二郎じろうさんは、大急ぎで家うちへ飛んで帰りました。二郎さんの綿入をぬっていらした母さんにいいました。
「サンタクロスに手紙をかいてよ、かあさん」
「なんですって、この子は」
「ピストルと、靴と、洋服と、ほしいや」
「まあ、何を言っているの」
「みっちゃんとこのかあさんも手紙をかいて、サンタクロスにやったって、
 人形だの、リボンだの、ハーモニカだの、ねえかあさん、ぼく、ピストルとサーベルと、ね……」
「それはね二郎さん、お隣のお家には煙突があるからサンタクロスのお爺じいさんが来るのです」
「でもいったよ、みっちゃんのかあさんがね、煙突がないとこは天窓がいいんだって」
「まあ。それじゃお手紙をかいてみましょうね。坊や」
「嬉うれしいな。ぼくピストルにラッパもほしいや」
「そんなにたくさん、よくばる子には、下さらないかも知れませんよ」
「だってぼく、ラッパもほしいんだもの」
「でもね、サンタクロスのお爺様は、世界中の子供に贈物をなさるんだから、
 一人の子供が欲ばったら貰もらえない子供ができると悪いでしょう」
「じゃあぼく一つでいいや、ラッパ。ねえかあさん」
「そうそう二郎さんは好よい子ね」
「赤い房のついたラッパよ、かあさん」
「えエえエ、赤い房のついたのをね」
「うれしいな」
 クリスマスの夜があけて、眼めをさますと、二郎さんの枕まくらもとには、立派な黄色く光って赤い房のついたラッパが、
 ちゃんと二郎さんを待っていました。二郎さんは大喜びでかあさんを呼びました。
「かあさん、ぼく吹いてみますよ。チッテ、チッテタ、トッテッ、チッチッ、トッテッチ」
 ところが、みっちゃんの方は、朝、目をさまして見ると、リボンと鉛筆とナイフとだけしかありませんでした。
 みっちゃんはストーブの煙突をのぞいて見ましたが、外には何も出てきませんでした。みっちゃんは泣き出しました。
 いくらたくさん贈物があっても、みっちゃんを喜ばせることが出来ないのでした。みっちゃんはいくらでもほしい子でした。

   今夜の一曲。

      稲垣潤一, 広瀬香美 - クリスマスキャロルの頃には

        



  




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# by Artist-mi | 2017-12-22 21:07 | Comments(2)
2017年 12月 15日
2017/12/15
  日記:

    クオーツの腕時計が不調になりました。25年は使っているもので時々オーバーホールした記憶がありますが
   最近はとんと忘れていました。年差10秒を謳うモノだったのですが・・・・、くたびれも見えたのでこの際
   買い替えるかと、いろいろ見ていたのですが・・・・!

   今更この歳で良い時計をかっても、しょうがないかな・・・・・。時を買えるわけでもなく・・・・。

   結局諦めて、程々のモノをアマゾンで買いました。


    それで・・・・、時を買える様なモノを買うことにしました。 ロボット掃除機です。人手を掛ける時間を
   このロボットにやらせればかなり楽になるのではと思い・・・・・、早速おむすび型の「ルーロ」を購入。

    深夜に居間で予約仕事をさせてみました。大した吸引力とは思えませんが、これが綺麗になるので少し
   驚いています。ゴミは細かい綿ボコリが主ですので本体も静電気のせいかホコリだらけになります。
   此れはと思い、帯電防止のエレガードをひげブラシと吸引口に少し塗ってみると綺麗に吸い込んでくれます。

    初めに床上の細かいモノを整理し外す手間はありますが、後は全く手が懸かりません。
   これは、すこぶる快適、かいてき・・・・・。 家内にも至って好評。

    今までの掃除中の時間が空くわけで楽チンこのうえない事。いいものを買いました。

     
f0080162_20432914.jpg

     
     今夜の一曲。

       What Bose Headphones can do to you!

      


    

      
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# by Artist-mi | 2017-12-15 20:49 | Comments(0)
2017年 12月 10日
2017/12/10

 日記:

   母の退院より半月、直ぐにでも旅立つ雰囲気だったのだがこの数日体調がしっかり
  した様に見うけられます。好きなモノを食べ、寝たい時に寝るという当たり前の生活が
  良かったのかも知れません。明日は訪問看護婦の方が来宅、明後日は医師の往診になる。

  生と死の境界がバカに薄く、小生には何が何やら当惑ばかりです。医学的には生きている
  のが不思議な状態の様だ。認知症の方はハチャメチャなのだが、心持ちはかなり安定して
  落ち着いた状態、性格が穏やかな事が幸いしているのでしょう。

   とは言え介護以外の生活もあるわけで、かなり忙しい。朝方はマイナス五度を切って
  来たので、車の冬支度を急いでいます。E、オイルを軽いモノに交換、スノータイヤへの
  履き替え、錆が出た下回りの手当など急いで行ないました。北風のなか、かなり寒いです。


  今夜の一曲。

   KIT ARMSTRONG J.S. BACH ITALIAN CONCERTO in F part 1









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# by Artist-mi | 2017-12-10 21:05 | Comments(2)
2017年 11月 28日
2017/11/28

 日記:

  母が退院してから二日目、自宅で過ごす事にようやくなりました。
 ケァーマネイジャー、往診する医師、看護婦さん。訪問看護士、ヘルパーさん
 入浴の業者などの方々が来宅、来月の日程などを調整しました。

  母の方は通院やディケァーに外出しない事が随分楽になった様です。
 介護をする家族はそれなりに大変ではありますが、慣れもあり落ち着いた気分にも
 なっています。
 医師の話では、環境が変わったこの二三日が当面の山場だそうですが、本人は
 いたって気楽なようで、こちらも一安心と云う所です。先ずは脱水に成らないのが
 第一の事で、とろみを付けたりいろいろ工夫して水分を補給していますが効果の
 程はイマイチです。

  ケァーマネや医師は最後が近いと言うのですが、私にはそうは診えないのです。
 もともと高齢で生きる力や反応が乏しいのは分かりますが、感覚としては実感が
 いまいちありません。今度傾眠傾向に陥ったら、救急車を呼ばない事をそれとなく
 勧められるのは、内心困ってしまいます。立場、経験の違いで解るのですが。

  穏やかな日々が続くのを願っています。


    今日の一曲。

   Mozart violin concerto nº 3 - Yehudi Menuhin, violin

    





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# by Artist-mi | 2017-11-28 17:46 | Comments(0)
2017年 11月 11日
2017/11/11

 日記:


    母が入院して十日あまり経過、現状は傾睡傾向と言う事になりました。
   しかし、見た感じはかなり覚醒している様だ。まだ食事はとれていません。
   症状的には、軽度の肺炎と軽い膀胱炎を患っているので、血尿がでるが今日は
   かなり回復してきています。痛む所は余り無いが、とにかく眠いそうだ。

    血液検査の結果ではヘモグロビンが老化によりかなり少ない事、腎臓の機能が
   かなり低下している事。透析は体力から考えてしない方が宜しいと云う診断が
   出ています。

    小生としては、この状態でどうするか、かなり悩んでしまいます。
   医師に決定を迫られる状況もありますし、その判断がこの場合良い事なのか
   本人の要望にもそっているか、はたして間違ってはいないか・・・・?
   在宅ではまた発作的な意識障害が出た場合は対処が難しい場合がありますし。
   
    なるべく静かに過ごしてもらいたいのですが・・・・! 悩んでしまいます。


    今夜の一曲。久しぶりに自宅で音楽を聴いています。

    Wanda Landowska plays Mozart -- Sonata in E flat major K 282
     
    
  



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# by Artist-mi | 2017-11-11 17:09 | Comments(4)